滞納マンション管理費等の回収方法の一つに公正証書があります。

公正証書?となじみが薄い方もいらっしゃるかもしれませんが,簡単に申し上げれば,公正証書とは,公証役場で公証人が作る文書です。東京には45カ所,公証役場があり,公証人は,元裁判官であったり元検察官であったりします。

作成に掛かる費用としては,例えば,200万円の支払いに関する約束であれば,1万円かからない程度の費用で作成することができます。費用等の詳細は日本公証人連合会のHPでご確認下さい。

どのような場合に公正証書は利用されるのでしょうか,これについては公正証書のメリット・デメリットを考えると自ずとみえてきます。

公正証書のメリット
公正証書の中で定めておく必要はありますが,なにより滞納者が約束を破った際には直ちに強制執行を行うことができる点です。弁護士を付けて訴訟を提起し判決を取得する費用と時間を考えれば,費用としては安くすみまし,時間的にはだいぶ短縮することができるからです。その上,ある程度,合意内容が両当事者間で詰まっていれば,両当事者が揃って公証役場に行くことですんなりと作成することもできます。できることなら公正証書で合意を取り交わしたいのですが,できないケースの方が多いのが実情です。

公正証書のデメリット
まず,少なからず作成にあたり公証役場に手数料を支払う必要がある点が挙げられます。この支払いすら滞納者にとっては苦しい場合があります。また,公正証書を作成するにあたっては,両当事者が公証役場に行かなければならない点もデメリットです。日中,公証役場に行く時間を仕事の都合で確保できない場合もあるためです。そして,なにより作成する前提として当事者間で支払に関する約束事を取り付けておく必要がある点です。当事者間に争いがあれば,もちろん公正証書を作成することはできません。協力的でない滞納者の場合も難しいでしょう。連絡すらとることができない債務者の場合などは論外といえます。公正証書で約束したことを破ると直ちに強制執行を受ける可能性があることから,躊躇する債務者は多いです。であるからこそ,支払督促や訴訟をしなければならないのです。

費用や時間の問題はさておけば,滞納者においても自身の置かれている状況を正しく理解しており,管理組合に迷惑を掛けているとして非常に協力的で,決して約束を破らないと強く決意されているような方が滞納者の場合は,公正証書の作成を通じ滞納問題はスッキリ解決されることが多いです。このような方の場合には,話し合いを重ることができ,債権者・債務者の関係ではあっても信頼関係,協力関係を築くことができ,当該話し合いを通じ滞納者の経済事情について管理組合としても色々と把握することもでき,それ故に管理組合としても当該経済事情や滞納者の意向にも応じ柔軟に対応できることもあるからだと思います。
そして何より覚悟を持って公正証書の作成に至ることから,きっちりと滞納分を支払ってくれる滞納者は多く,公正証書を債務名義として強制執行を申し立てるような事態になることは少ないです。

弁護士が滞納マンション管理費の回収にあたる場合ですが,公正証書の作成を試み,それに時間を掛けるも結局滞納者との話し合いがまとまらない,というケースもあり,その場合,改めて訴訟を提起せざるを得ず,公正証書の作成を試みた分時間をロスすることになってしまうことから,最初から淡々と訴訟を提起して,その中で和解なり,判決で解決を試みるケースの方が多いと思います。いずれの方法によって滞納マンション管理費の回収にあたるかはケースバイケースの判断ですが,基本的には当事者間における以前の交渉経緯などから判断することになると思います。


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