賃貸借関係で1番多いご相談類型は,やはり賃貸借契約の終了に基づく不動産の明け渡しに関するご相談です。中でも多いのは,やはり家賃の不払いに基づくアパートやマンションの1室といった建物の明け渡しに関するご相談です。

家賃滞納と建物明渡

 ご相談にみえる時点で既に2,3か月から半年程度滞納していることも多く,通常は,直ちに支払を催告し賃貸借契約を解除した上で不動産の明け渡しを求めていくことになります。
 ただ,滞納している家賃を回収していくことは非常に大変です。夜逃げ同然に姿をくらましてしまうケースもあるためです。
 このようなケースであっても,勝手に鍵を開けて家に入り中の物を処分することは無論できません。まずは明渡訴訟を提起し,勝訴判決獲得した後,強制執行手続を通じて明け渡しを実現せざるを得ません。
 こうなるとワンルームの場合でも数十万の費用(実費)が掛かります。その他,新しい入居者を入れるためにはルームクリーニング費用等も掛かります。ルームクリーニング後すぐに入居者が見つかればいいですが,なかなか見つからない可能性もあります。こうなるともう踏んだり蹴ったりです。
 しかしながら,明け渡しは実現できたけれども滞納家賃の満額回収が実現できない,というケースは決して珍しいケースではありません。
 賃貸人として損失を最小限にするためには,明け渡しに向けた手続に着手して頂き,明渡手続完了の見込みが立ったところで入居者募集を行っていくことが必要になろうかと思います。
 督促に応じる気配もなく滞納状況が続くようであれば,弁護士にご相談されることをお勧めします。

建物明渡実現までのタイムスケジュールと方針

地代滞納と土地明渡

 土地賃貸の場合は,明け渡しが実現した後の土地の利用方法が色々と考えられるところであり,明け渡しが実現しさえすれば,土地の利用価値が非常に高く,地代滞納による経済的なマイナスも十分に回復可能であるという特殊性があります。
 また,土地賃貸の場合は,建物賃貸の場合と比べ,解除原因が厳格に判断される,という特殊性もあります。通常,ほんの数か月の地代の滞納で解除が認められるようなことはありません。家賃よりも地代の方が安く設定されていることも多いこと,建物賃貸の場合よりも長期間の賃貸が予定されていること,建物収去を伴う関係で賃借人のみならず社会的損失も大きいことなどが影響してるためです。
 したがって,建物収去・土地明け渡しを求める場合には,アパートやマンションの1室といった建物明渡の場合とは異なり,慎重に事を進めていくことが重要となってきます。解除原因があるかも含めて,一度は弁護士に相談されることをお勧めします。

明渡を求めるその他の要因

 ペット飼育,近隣入居者への迷惑行為,用法違反,無断増改築・転貸など色々な要因が考えられますが,いずれも賃料不払の場合ほど単純な話ではないことをまず押さえておきましょう。
 この他,家屋やビルの老朽化,耐震不足を要因とする場合は,賃貸人側と賃借人側のそれぞれに様々な事情や思惑があり,それらが複雑に交錯する場面でもあることから,非常に難しい舵取りが要求されるケースといえます。それだけに慎重に事を進めていくことが必要となります。
 家賃や地代の滞納案件以上に専門的な知識と判断が求められることから,一度は弁護士に相談されることをお勧めします。